8月1日 #ラブホで死にたくない に参加しました

8月1日 #ラブホで死にたくない に参加しました


今年6月1日、立川のラブホテルでセックスワーカーが刺殺されるという傷ましい事件がありました。

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この事件に対する追悼の意味を込めて、8月1日に「#ラブホで死にたくない」という有志のグループがアクションを起こしました。


私(わたし)も行動に参加したので、当日の様子を振り返って感想を書こうと思います。演説の内容に関して私(わたくし)からのコメントはほとんどありませんが、演説を録音していた記者の方々が後日記事にしてくださるそうですし、Twitterでコメントしている方々もいらっしゃるので、演説について知りたい方はそちらを参照してみてください。

上野

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当日の行動は13時から上野不忍口で始まりました。あたしは主催者でも何でもなかったのですが、ビラ配りを手伝いました。信号付近での行動だったため人の流れは早かったのですが、たまに足を止めて街頭宣伝を聞いてくれる人がいたので何枚かビラを撒くことができました。


ここで事件発生!


私(わたし)がビラを渡した方――権威あるバッジ(菊かひまわりだったと思う)をつけてスーツをビシッと決めた、社会的に男性とされるジェンダーコードを身に纏う人、つまり「おっさん」――があたしの方に寄ってきて「演説が下手」「何を伝えたいか分からない」と苦情。いや、知らんがな。


その後、マイクで演説していた人の方にも話しかけて説教を始める始末。これじゃただのマンスプじゃんねえ😔。


マンスプおじさんに対しては何人かの行動参加者が止めに入って帰ってもらいました。この件以外では特に大きな問題もなく、行動終了後は電車で池袋に向かいました。

池袋


池袋では行動の前に、参加者が横断幕にそれぞれの思いを書き寄せていました。街頭宣伝の間も、参加者や通りがかった人が書き込みをできるように横断幕は地面に敷いてありました。新宿、立川でもこれは同様でした(写真を撮る際に人が映り込まないという利点もありますね)。

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私(わたし)はこの池袋の行動で思ったことがあります。それは「組織」というもののあり方についてです。


誰が通報したのか定かではありませんが、池袋では行動中に警察を呼ばれるという一幕がありました。行動グループの人たちが警察に対応したのですが、その際に「誰が責任者とかじゃなくて、私たちみんなが主催者なんだ」という趣旨のことを言っていました。


後から「#ラブホで死にたくない」の主催グループの人に聞いたのですが、この追悼行動は団体として開催しているものではなく、リーダーもいないのだそうです。セックスワーカーの当事者、経験者の方たち数人が有志でやっているだけで、組織的なものではないとのこと(そういえば「当事者は女衒に踊らされているんだ!」みたいなこと言っている人がいたなあ。全然違うじゃん😡)。


わたしも実はある運動団体で活動していたことがあるのですが、そこは上下関係がガッチガチのところで、ハラスメントも日常的にありました。当人たちは「ここは上下関係ないしみんな平等だよ」と嘯きそうなものですが、実際は”責任者、活動家”と”それ以外の人”の区分は暗黙の了解で厳格に分けられていて、民主主義的な組織とは全く程遠いところでした。そういうところで過ごしてきたわたしからすると、「#ラブホで死にたくない」の参加者の間には厳格な人間関係というものが一切なくて、「これが水平的な組織っていうやつかあ〜」と思いました。

新宿

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当日の行動で聴衆が一番多かったのは新宿駅東南口前の行動でした。「#ラブホで死にたくない」という、背景事情を知らないと唐突な印象を受けるコールに思わず失笑する人や、冷やかしで横断幕を覗きに来る人も何人かいましたが、6月の事件やセックスワーカーに対する差別について話すと大抵の人は理解を示してくれました。

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新宿の行動で良かったことは、レインボー・フラッグやトランスジェンダー・フラッグも持ち込まれたことでした。セックスワークを排除しようとする人たちと、トランスジェンダーやセクシュアル・マイノリティを差別する人たちは往々にして重なることが多いため、2つの旗が持ち込まれたことは、それぞれの当事者に対する連帯を表していてとても良かったと思います。演説でもトランスジェンダーセックスワーカー、行動に賛意を示す参加者の方たちが順々にマイクを渡してそれぞれの思いを語っていました。周りでは足を止めて真剣に聞いている人も多かったです。

立川


1時間ずつ行動して移動する、を繰り返しているので流石に疲労が溜まってきました。8月なので暑いですし、こまめに水分補給をしないと熱中症になりそうです。しかも新宿から立川は遠い!


とはいえ、行動には休憩は必要です。19時になるまでカフェに集まって休憩〜。行動の合間の休息も楽しいひと時です。


さて、立川の行動ですが、新宿ほどではないにせよこちらでも聴衆は多かったです。駅前のペデストリアンデッキは広いので歩く人の邪魔になりませんし、聞く方もゆっくり聞けるので、行動場所としては最適だったように思います。

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立川は事件の起きた場所で、行動グループの方々も事件と自身の体験を交えて話していました。


「事件の起きた日の翌日は出勤日で、店に休みたいと言ったが『私たちが何とかするから大丈夫』だと。つまり自衛するしかない」


セックスワークを廃業しろというけれど、なぜ他の仕事に対しては何も言わず風俗業にだけ廃業を迫るのか。そもそもみんな『労働』自体したくないはずだ」


「私の体は私のものだ!」


・・・


追悼行動を呼びかけた「#ラブホで死にたくない」の行動グループの人たちは、とても活力に満ち溢れていました。誰かに言われてやっているわけではなく、殺されたセックスワーカーを悼み、助けてあげられなかったと悔やみ、性風俗に対するスティグマと闘うことを高らかに宣言する。私たちはここにいるよと。その姿に心を打たれました。

追悼行動を通して:社会運動と「組織化」


一部の社会運動界隈では、日本では組織化が行われていないとして、マイノリティと共闘して社会運動の組織化を進めるべきだという人たちがいます。その通りかもしれません。しかし、私(わたし)は問いたい。その「組織化」の対象にセックスワーカーは入っているかと。トランスジェンダー、在日外国人、障害を持つ方等の人たちは入っているかと。


日本の社会運動でいう「組織化=オルグ」とは多くの場合、ある団体に加入し、自分たちの言うことを聞く当事者を選別し、支配下に置くことを指すのではないかと私(わたくし)は思っています。それは能力主義を前提とした、優生思想に親和的なものであると考えます。



一方、「#ラブホで死にたくない」は、ある団体が指図して仕組んだものでもなく、行動の参加者を排除しない水平的な運動です。組織に入らなくても運動はできるし、言ってしまえばこの行動で「組織」された参加者もいると思います。何ならわたしもその一人だと思います。


結局のところ、フェミニズムの視点のない「オルグ」なんて、単なるパワハラに過ぎないと思います。わたしは8月1日の追悼行動に参加して、ホモソーシャルな関係を再生産しない、互いをエンパワメントする社会運動のあり方を学びました。



行動後、主催者の方が「事件を忘れないために1回きりの行動にならないようにしたい」とおっしゃっていました。今後も行動が行われるのであれば、また参加したいと思います。当日行動に参加されたみなさん、Twitterハッシュタグをつけて呟いたみなさん、お疲れさまでした。

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行動後にげいまきまきさんからいただきました。ありがとうございます。